- プロのひと工夫
大豆食品を使いこなそう!
2020.06.26
豆腐・納豆・味噌などの大豆加工食品は、私たちの食生活にとても馴染みのあるもののひとつです。バリエーションが豊富で調理も簡単なものが多く栄養豊富であることから、がん患者さんの様々な悩みに対処しながら幅広く活用することができます。
また、メディカルオンコロジー第4回 知っておきたい乳がんと食生活の関係でも、積極的にとりたい食品として大豆食品が挙げられています。
そこで今回は、大豆食品の栄養や注意点、活用レシピなどを解説していきます。
■大豆の栄養を読み解こう!
上記の表からわかるように、大豆や大豆食品にはタンパク質が豊富に含まれており、全体的に低カロリーで脂質や糖質は少ない特長が挙げられます。乳がん患者さんなどで体重管理をされている方や、下痢気味の方、やわらかい食事をお召し上がりの方など、脂質を抑えてタンパク質を摂りたい方におすすめの食材です。
タンパク質だけでなく、鉄分やエネルギーもしっかりと摂りたいときにはお肉もおすすめなのですが、術後でお肉を食べることが難しい場合や、消化に良い食事を摂りたい場合には、まずは大豆食品から試してみましょう。
1.蒸し大豆
蒸し大豆は蒸気で調理するため栄養が水に溶け出すのを抑えることができ、他の大豆食品よりエネルギーや糖質、特にタンパク質が多くなっています。
タンパク質は、筋肉や臓器、肌などの材料になる非常に重要な栄養素であり、大豆は「畑の肉」と呼ばれるほどタンパク質を豊富に含んでいます。植物性タンパク質は、動物性タンパク質と比べると栄養価が劣るといわれますが、大豆は※アミノ酸スコアが最大値の100であり良質なタンパク質といえます。吸収率も95%以上と高く、体内でほぼ完全利用されます。
※アミノ酸スコア:必須アミノ酸が、人間の身体にとって望ましい量に対してどれくらいの割合で含まれているかを示す指標。
2.大豆水煮
蒸し大豆と比較すると、大豆を煮ている間に水に溶けだしてしまう栄養成分もありますが、カルシウムは牛乳とほぼ変わらず、大豆イソフラボンを豊富に含んでいます。
大豆イソフラボンは、女性ホルモンである「エストロゲン」に似た働きをするとされています。加齢に伴うエストロゲンの減少によっておこる更年期障害・骨粗鬆症を軽減する効果や、中性脂肪や血圧を正常に保ち生活習慣病を予防する効果が、期待されています。
【蒸し大豆・大豆水煮を使ったレシピ】
蒸し大豆や大豆の水煮缶はそのままでもおいしく、サラダやレトルト食品に手軽にプラスでき、調理の負担を軽減したいときにも役立ちます。大豆に含まれるオリゴ糖は腸内のビフィズス菌のエサになって腸の運動を活発にするため、抵抗力や免疫力の低下が気になる方にもおすすめです。
▼消化吸収の良い「大豆のコロコロサラダ」
https://kama-aid.com/recipe/2749
▼便秘やむくみに「きざみ昆布と大豆の炒り煮」
https://kama-aid.com/recipe/5740
※各レシピで使われている大豆水煮缶は、蒸し大豆で代用できます。
3.木綿豆腐
豆腐は食物繊維が少なく消化が良いため、大腸がん患者さんの術後などにも最初のステップとして用いられる食材のひとつです。安価で手軽に手に入るうえ、味も淡白で食べやすく、日本人の食卓には欠かせない食材のひとつですね。
特に、豆腐にはカルシウムが多く含まれており、吸収率も優れているといわれています。鉄分も豊富ですが、大豆に含まれる鉄分(非ヘム鉄)は吸収に課題があるため、ビタミンCを含む食材と一緒に食べるとよりよいでしょう。
【木綿豆腐・厚揚げ・高野豆腐・納豆を使ったレシピ】
治療の副作用等により肉や魚のにおいが気になって食事が進まない場合、大豆食品でたんぱく質を補いましょう。大豆食品は淡白な味のものが多いため、いろいろな調理法や味付けを楽しむことができます。また、豆腐は消化吸収が良いため、胃腸の調子が悪いときなどにもおすすめです。
タンパク質を補給したいときには、食事に冷奴や納豆をプラスすることで簡単に栄養バランスを整えることができます。高野豆腐や厚揚げは、パンの代わりにすることで糖質を抑えられるだけでなく、しっかりとタンパク質を摂ることもできます。調理も簡単で腹持ちが良く、満足感も得られるでしょう。
▼豆腐たっぷり「ふわふわつくね」
https://kama-aid.com/recipe/2418
▼しっかり味!「厚揚げの照り焼き」
https://kama-aid.com/recipe/5454
▼食べ応え満点!「高野豆腐のキッシュ風」
https://kama-aid.com/recipe/5807
▼混ぜるだけ!アボカドチーズ納豆
https://kama-aid.com/recipe/1348
4.生おから
豆乳の絞りかすである「おから」には不溶性食物繊維が豊富に含まれ、便のかさを増やしたり、腸の蠕動(ぜんどう)運動を促したりするのに役立ちます。また、不溶性食物繊維は腸内で善玉菌のエサとなり、腸内環境を整える効果も期待できます。また、生おからは、腹持ちもよく、ヘルシーで、体重管理をされている方にもおすすめです。
※大腸がん術後の患者さんなど、食物繊維量に制限のある場合は控えましょう。
【生おから・おからパウダー・きな粉を使ったレシピ】
おからを乾燥させて粉末にしたおからパウダーや、きな粉は加熱が不要で、ヨーグルトや味噌汁に加えることでタンパク質や食物繊維をプラスすることができます。おからパウダーを小麦粉の代わりに使用すると大幅に糖質を抑えることができ、糖質が気になる方にもスイーツをお楽しみいただけます。
▼ふんわりやわらか「豆乳とおからのお好み焼き」
https://kama-aid.com/recipe/5726
▼糖質オフでも満足感はしっかり!「おからブラウニー」
https://kama-aid.com/recipe/5672
▼素朴なおいしさ「はちみつきな粉ヨーグルト」
https://kama-aid.com/recipe/4366
5.豆乳
豆乳は牛乳と比較するとカロリーや脂質、糖質が低く、鉄分を豊富に含んでいます。
【豆乳を使ったレシピ】
少量で栄養をつけたいときには、スープを豆乳スープにするなどいつもの食事に大豆食品をプラスすることで、量を増やさず効率的に栄養を摂ることができるでしょう。なめらかな口当たりで、噛むのがつらい方や口内炎が痛む方にもおすすめです。
▼まろやかな味わいの「豆乳みそ汁」
https://kama-aid.com/recipe/2501
▼レンジで簡単!まろやか豆乳豆腐
https://kama-aid.com/recipe/3775
■気になる!大豆イソフラボンの取り過ぎには注意が必要なの!?
乳がんの発症リスクを下げるのに効果的な食品として注目されているイソフラボンですが、女性ホルモンと似た働きをするため、大豆や大豆食品をとり過ぎるとホルモンバランスが乱れ健康を害する可能性もあるといわれています。
大豆イソフラボン(吸収されやすい大豆イソフラボンアグリコンとして)の1日あたりの摂取目安量は食品安全委員会により上限値70〜75mgと定められています。この値はこの量を毎日欠かさず長期間摂取する場合の平均値としての上限値であり、大豆や大豆食品からの摂取量がこの上限値を超えたことによりすぐに健康被害に結びつくものではないとされています。下記の数値からも、通常の食事で大豆食品を摂る分には過剰摂取を心配する必要は特にないといえるでしょう。
【食品に含まれる大豆イソフラボンアグリコンの量】
・豆腐1丁(400g)あたり81.2mg
・納豆1パック(50g)あたり36.8mg
・油揚げ1枚(40g)あたり15.7mg
・豆乳1杯(200g)あたり52.1mg
ただし、特定保健用食品としてサプリメント等で大豆イソフラボンを追加摂取する際の上限値は、追加摂取上限値30mgとされています。通常、日本で販売されている大豆イソフラボンのサプリメントは1日分の摂取量が30mg以内に設定されているものがほとんどです。サプリメント等を使用する場合は含有量を確認し、指示されている量を守って摂取するようにしてください。特定保健用食品はあくまでも食事の補助とし、通常の大豆や大豆食品から栄養を摂りましょう。
■まとめ
今回は、大豆食品の栄養と活用方法についてご紹介しました。大豆食品は栄養が豊富なだけでなく、調理や味付けのバリエーションが豊富なのも魅力です。毎日の食生活に大豆・大豆加工食品を取り入れて、食事を楽しみながら健康管理にお役立てください。
【参考URL】
・厚生労働省 大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A
https://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/02/h0202-1a.html#q03
・農林水産省 大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A
https://www.maff.go.jp/j/syouan/nouan/kome/k_daizu_qa/#b8
・e-ヘルスネット
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-036.html