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がんと食生活

「食」で患者を「笑顔」に

医療現場の変化

癌患者の治療は、抗癌薬など癌に直接効果のある研究が重視され、栄養管理はあまり注目されませんでした。しかし2016度の診療報酬改定で管理栄養士による専門性が重視され、癌患者に対する栄養指導が診療報酬の対象になりました。食と栄養の専門家である管理栄養士・栄養士が食品・栄養素・料理を考え、実行可能性の高い食事提案ができるよう挑戦していきたいと考えています。

癌と食生活について

アルコールや喫煙が口腔咽頭領域や食道癌の発症と関わりがあること、十分な野菜や果物の摂取や食物繊維の摂取量が多いことが癌の発生を抑制することは知られています。現状では、食による癌の予防は、偏りのない多様な植物性素材の摂取が一番だと思われています。また、イソフラボン・カテキン・ポリフェノールやn-3系多価不飽和脂肪酸などについても癌の発症や進展を抑制する、あるいは関連がなかったなどの報告がされています。

確実な情報をもとに食事治療法を示すことができればと思いますが、現在は試験が進行中であったり、新たに研究が進められようとしています。今後研究が進むにつれ、食・栄養に関わる確実な情報も伝えて行きたいと思います。

癌患者の食事について

食べられない原因は、治療内容・薬の作用・気分的なことなど、患者個々に考えることが重要です。身の置き所ないだるさや辛さにより食欲が湧かない、口内炎や味覚障害のため食べるものを口にすることが苦痛、痛みや便秘・下痢のために食べる量が少ないなど、人によって状況は違い、一日の時間経過でも食欲は違ってくることがあります。

家族にとっても食べられない患者を支えることは辛いことです。これまで、それぞれの患者の治療経過に寄り添い、副作用や体の痛み、そして生活状況・環境・食嗜好・食材・調理の感覚の記憶を辿りました。摂取量の改善を見込めない場合でも、イベント食・お祝いの膳、日々の生活の食事の思い出の場面など、患者・家族と食にまつわる物語からのメニューを生みだしました。そして、「食」で患者を「笑顔」にできると信じています。

癌患者は各種の治療(外科治療・化学療法・放射線治療)によって食事摂取量が低下し、吸収能力も落ちてきます。治癒や日常生活に耐えるうる体力維持、全身の治癒環境を整える体力を付けるため、さまざまな原因による食欲低下に対応した調理方法や料理は食べられない方々への大きなサポートになります。患者と家族に食べられないことの大きな苦痛や栄養状態の低下を改善するメニューを探るため、情報を提供していきたいと考えています。

大妻女子大学
家政学部 教授
がん病態栄養専門管理栄養士
川口美喜子

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