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「免疫力を高めたい」ときにおすすめの栄養素&レシピ
2020.11.27
体調管理や感染症予防のために、免疫力を高めておきたいと考えるがん患者さんも多いのではないでしょうか。治療中は心身ともに大きな負担がかかるので、免疫力が下がりやすくなるといわれています。また、季節の変わり目やストレスが強い時期も、免疫力の低下が心配です。
「免疫力」とは、ウイルスや細菌などの病原体や、がんから体を守る「防御能力」のことをいい、具体的には、血液成分の白血球やリンパ球の働きを指し、これらは「免疫細胞」と呼ばれます。免疫細胞は、気温、環境、衛生状態、食生活、ストレスなど、さまざまな要因の影響を受けますが、なかでも食生活による影響が大きいといわれています。毎日の食事で必要な栄養素をバランスよくとり、体の防御能力を保つことが大切です。
■「免疫力を高めたい」ときにおすすめの栄養素
免疫力を高めるためにとくに注目したいポイントは「免疫細胞の活性化」「腸内環境を整える」「精神面を安定させる」の3点。今回は、それぞれに関係の深い栄養素について詳しくご紹介します。
1.免疫細胞の活性化
①タンパク質
タンパク質は、免疫活動のエネルギー源になるほか、免疫細胞の原料になり免疫力を高めたいときに役立ちます。また、睡眠の質の向上にも関わるので、睡眠不足による免疫力低下を防ぐ効果も期待できます。タンパク質が豊富な肉類、魚介類、大豆製品、乳製品などをしっかり摂って必要なエネルギー量を満たすことで、感染症対策にもつながるでしょう。
②ビタミンACE
ビタミン類には免疫機能を調整する作用があり、免疫細胞の構成成分にもなります。なかでもビタミンA、C、Eは強力な抗酸化作用で、免疫細胞を活性化する働きをするといわれています。3種類を一緒にとることで互いに作用を強化する相乗効果が期待できることから、ビタミンACE(エース)と呼ばれます。
ビタミンAは、粘膜を強くしてウイルスなどの侵入を防御し、免疫力の低下を防ぐといわれています。レバー、うなぎ、人参、ほうれん草などに豊富です。
ビタミンCは、免疫細胞の活性化や、抗ストレス作用で免疫力の低下を防ぐといわれています。ブロッコリー、小松菜、レモン、オレンジ、イチゴなどに豊富です。
ビタミンEは、強い抗酸化力で免疫細胞の酸化を防ぐといわれています。アーモンドや落花生などのナッツ類、植物油(ひまわり油やサフラワー油(べにばなゆ)など)に豊富です。
▽おすすめレシピ
「カラフルオムレツ」
タンパク質が豊富な卵と、ビタミンACEが豊富なパプリカを使ったオープンオムレツ。彩りがキレイで、見た目からも元気をもらえる1品です。
https://kama-aid.com/recipe/5846
「鶏のトマト煮」
タンパク質が豊富な鶏肉と、ビタミンACEが豊富なピーマンを使ったトマト煮。トマトは抗酸化作用の高いリコピンが多く、免疫への効果が期待できます。1品でバランスよく栄養をとれるのもおすすめポイントです。
https://kama-aid.com/recipe/5890
2.腸内環境を整える
①乳酸菌
免疫力を高めるためには、免疫細胞が多く集まる腸内環境を整えることが大切です。乳酸菌は、腸内で善玉菌として有害菌の増殖を抑えて、腸内環境を正常に保つ働きがあるといわれており、腸内の免疫細胞を活性化して免疫力を高める効果が期待できます。ヨーグルト、乳酸菌飲料、ぬか漬け、納豆、甘酒などに豊富です。
②食物繊維
食物繊維には、乳酸菌をサポートして腸内の善玉菌を増やす作用や、腸の働きを刺激して腸内の有害物質の排出を促す作用があるといわれています。また、腸内環境を改善し、便秘を予防する効果も期待できます。野菜類、海藻、乾物、豆類、いも類などに豊富です。
【シンバイオティクスとは】
最近、耳にするようになった「シンバイオティクス」という言葉。みなさんは具体的にご存知ですか。シンバイオティクスは、「プロバイオティクス」と「プレバイオティクス」を組み合わせることで、腸内環境を整える効果がよりいっそう高められるという新しい考え方です。
「プロバイオティクス」・・・乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌
「プレバイオティクス」・・・食物繊維やオリゴ糖など善玉菌のエサになるもの
→この2つを一緒にとることを「シンバイオティクス」という。
▽おすすめレシピ
乳酸菌と食物繊維を一緒にとれる「シンバイオティクス」レシピをご紹介します。腸内環境を整え、免疫力の低下を防ぐ効果が期待できるでしょう。
「ヨーグルト入りコールスローサラダ」
たっぷりの野菜とドレッシングのヨーグルトから、食物繊維と乳酸菌を一緒にとれる生野菜サラダ。腸内環境を整えて免疫力アップにつながります。便秘気味のときにもおすすめです。
https://kama-aid.com/recipe/5825
「納豆ナムル」
キムチ、納豆、大豆もやし、ほうれん草を使った、乳酸菌と食物繊維を一緒にとれるナムル。キムチ、納豆などの発酵食品には乳酸菌が含まれるので、腸内環境を整える効果が期待できます。大豆もやしは、普通のもやしより食物繊維やタンパク質が多く、栄養価の高い野菜です。
https://kama-aid.com/recipe/5857
3.精神面を安定させる
①カルシウム
精神的なストレスは、免疫力を低下させる原因になるといわれています。過剰なストレスを受けると、自律神経のバランスが乱れて病原体と戦う抗体の分泌が低くなるからです。カルシウムには、神経の興奮を鎮めたり精神を安定させたりする作用があるといわれており、ストレス緩和に役立ちます。カルシウムが慢性的に不足すると、骨折や骨粗しょう症を起こしやすくなるだけでなく、イライラとした神経過敏な状態になりストレスを感じやすくなります。
牛乳、チーズなどの乳製品、干しエビ、煮干し、油揚げ、水菜、菜の花などに豊富です。
②マグネシウム
マグネシウムは、カルシウムとともに骨の形成をサポートする働きがありますが、神経の興奮を抑える作用もあるといわれています。不足すると、カルシウム同様に神経過敏な状態になり、ストレスを感じやすくなります。
豆腐などの大豆製品、未精製の穀類、アーモンドなど種実類に豊富です。
▽おすすめレシピ
「あさりと小松菜の洋風酒蒸し」
カルシウムの多い小松菜と、マグネシウムの多いあさりを使った洋風の酒蒸し。精神面のストレス反応を和らげる効果が期待できます。鉄も豊富なので、貧血でお悩みのときにもおすすめです。
https://kama-aid.com/recipe/5802
「厚揚げのネギみそチーズ」
厚揚げはタンパク質のほか、カルシウムとマグネシウムも豊富です。チーズもカルシウムが多いので、1品でタンパク質、カルシウム、マグネシウムを十分にとれて、ストレス緩和につながるでしょう。味噌、チーズなど発酵食品を使うので、腸内環境を整える効果も期待できます。
https://kama-aid.com/recipe/5872
■まとめ
免疫力は、特定の食品を食べればすぐに高められるというものではありません。免疫力を高める効果が期待できる栄養素を意識しながら、栄養バランスのとれた食事、質の良い睡眠、適度な運動、ストレス解消など、生活習慣全体を整えることが大切です。
今回ご紹介した内容を参考に、免疫力や抵抗力の低下を防いでしっかりと健康管理をしていきましょう。
【参考URL・書籍】
・厚生労働省 e-ヘルスネット「腸内細菌と健康」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-05-003.html
・成美堂出版「免疫力を高める毎日の健康おかず」監修 管理栄養士 牧野直子