プレミアムサービスの無料開放のお知らせ

詳しくはこちら
  • プロのひと工夫

吐き気がするときのひと工夫

2020.10.30

吐き気や嘔吐は、がん治療の影響により起こりやすいといわれており、十分な食事や水分を摂ることが困難になってしまうつらい副作用のひとつです。症状が続くと、食欲減退や体力低下により全身の状態が悪くなる恐れもあることから、少しでも早い時期から食べられるように工夫する必要があります。

今回は、「吐き気がする」という悩みにクローズアップし、悩み解消につながる調理のヒントを解説します。


■症状と原因
吐き気とは、食べようとするときに料理のにおいなどで胃がむかむかして気持ち悪くなり、吐きそうになる不快感のことをいい、嘔吐とは、実際に吐いてしまうことを指します。
抗がん剤治療や、放射線治療の副作用のほか、特定の薬剤の影響でも起こりやすくなるといわれています。強い不安や、吐き気・嘔吐の体験を思い出して、症状が起こる場合もあります。
症状を無くすことは難しいですが、下記の工夫により、食事への抵抗感を減らし、食事に対し前向きになれるきっかけを作ってみませんか。

1.調子のよいときに食べる
症状が強いときに無理に食べるとよりつらくなることがあります。食事時間にこだわらず、体調のよい時間帯や食べられそうなときに食べるようにしてください。
いつでも食べられるように、小さなおにぎりやパン、クラッカーなど、簡単につまめるものを準備しておくとよいでしょう。

▽おすすめレシピ:一口おいなりさん
https://kama-aid.com/recipe/5789
一口サイズで食べやすいおいなりさんは、酢飯の酸味が効いていて、吐き気がある時でも食べやすくおすすめです。

2.少量を数回にわけて食べる
一度に食事を多くとると、症状が起こりやすいので、少量を数回に分けて食べるようにします。量が多いと見るだけで気分が悪くなることがあるので、盛り付ける量は少なめにして彩りよくしましょう。よく噛んでゆっくり食べることも大切です。

3.においを抑える
食べ物のにおいで症状が出やすいので、温かいものは冷ましてから食べるようにします。
においの強い食材(ニンニク、ニラ、ラッキョウなど)は避け、魚や肉は下ゆでしたり、しょうがやかんきつ類、梅などを使ったりして、くさみを感じないように調理を工夫しましょう。パン、シリアル、果物など、においを感じにくいものもおすすめです。

▽おすすめレシピ:朝のフルーツヨーグルトフレーク
https://kama-aid.com/recipe/5599
シリアルはにおいが少なくザクザクとした食感で、吐き気があるときでも食べやすい食材です。果物やヨーグルトをプラスすることでしっかり栄養補給ができます。

4.口あたりのよい食品を選ぶ
何も食べられないと感じるようなときには、冷たくて口あたりのよいものが比較的食べやすいようです。アイスクリーム、シャーベット、ゼリー、みずみずしい果物のほか、冷たいめん類や冷製スープ、卵豆腐、冷ややっこ、刺身などを試してみましょう。

▽おすすめレシピ:カラフルトマトゼリースープ
https://kama-aid.com/recipe/5699
冷たいトマトスープをゼラチンでゆるく固めたゼリースープは、プルンとした食感でのどごしが良く、トマトの酸味が爽やかです。

5.消化のよい食品を選ぶ
脂っこいものや固いものなどを食べると、胃もたれやムカムカ感が出やすく、症状が強まることがあります。おかゆややわらかく煮た野菜のスープなど、胃腸の負担になりにくく消化のよい食品を選びましょう。

▽おすすめレシピ:大根おろしと梅のつけだれ素麺
https://kama-aid.com/recipe/5723
冷たいそうめんを大根おろしと梅のさっぱりとしたつけだれにつけて食べるシンプルなレシピです。口当たりがよく消化にもよいので、吐き気があるときに食べやすいでしょう。

6.酸味のあるさっぱりしたものが食べやすい
魚や肉が食べづらいときでも、酢やレモン、ゆずなどのかんきつ類の酸味を少し効かせると食べやすくなります。ただし、酸味がきつ過ぎると、むせやすく吐き気につながるので、気をつけて下さい。

▽おすすめレシピ:タラのレモン蒸し
https://kama-aid.com/recipe/5544
タラにレモンスライスをのせて蒸します。酸味が爽やかなさっぱりとした味で、不足しやすいタンパク質が補給できます。

 

■控えたい食べもの
吐き気や嘔吐があるときに、症状をおさえたり悪化させたりしないために、控えたほうがよい食べ物や料理を覚えておきましょう。

1.食物繊維の多い野菜類
ごぼう、れんこんなどの根菜類に多く含まれる不溶性食物繊維は消化に時間がかかり、症状の悪化につながることがあるので、控えめにしましょう。
ぬめりのある海藻(めかぶ、なめこなど)や山芋、オクラなどに含まれる水溶性食物繊維は胃腸に負担が少ないので、控えなくても構いません。

2.脂肪の多い肉類、油脂類
牛霜降り肉や、まぐろのとろ、揚げ物など、脂肪分が多いものは胃の不快感つながることもあるため、できるだけ避けましょう。
バター、生クリーム、ヨーグルトなどに含まれる乳脂肪分は、少量であれば摂っても構いません。

3.香りの強い野菜類
ニンニク、ニラ、ネギ、セロリ、ハーブ類など香りが強い野菜や、特徴的なにおいのある食品は、吐き気を引き起こす要因になるので控えましょう。

4.においの立つ料理
炊きたてのごはん、魚料理、煮物など、湯気でにおいが立つような料理は、吐き気を誘発しやすいので、なるべく控えて冷ましてから食べるなど工夫をしましょう。


■嘔吐したあとの食事と水分の摂り方

嘔吐してしまった場合の対処法について説明します。嘔吐後の水分のとり方や食事開始時の注意点など参考にしてください。

1.嘔吐後12時間は食事を控えましょう
嘔吐したあとは、消化器の粘膜が過敏になっているので、12時間程度は食事を控えましょう。口の中が気持ち悪ければ、冷たい水や番茶、レモン水でうがいをしたり、氷やキャンディーを口に含んだりすると、口の中がさっぱりとして症状を和らげる効果が期待できます。
吐き気や嘔吐がおさまるまでは、無理に食事をとる必要はありません。ラクになるまで、ゆっくりと体を休めましょう。

2.嘔吐後の水分補給と食事開始時の注意点
嘔吐後は、水やお茶などの水分を摂るのはもちろん、嘔吐で失われた電解質を補給するために、スポーツ飲料や経口補水液、栄養バランス飲料などを摂りましょう。水分を一度に摂れないときは、氷や好きなドリンクを凍らせたものを口に含み、少しずつ水分補給をして下さい。
症状が落ち着いたら、果汁、スープ、みそ汁などで水分と栄養を補給するとよいでしょう。
温かくにおいの立つ食べものは吐き気を起こしやすいので、冷たいポタージュや冷汁、ヨーグルトなどがおすすめです。食欲がないときは、ゼリー、シャーベット、アイスクリーム、冷凍した果物などを少し食べると、食べ始めのきっかけになることがあります。

3.嘔吐が続き食べたり飲んだりが困難な場合
食事の工夫をしても、吐き気、嘔吐が何日も続いて食事や水分が摂れないときは、担当の医師にすぐ相談をして下さい。症状によっては、点滴で水分や栄養剤を補給する処置が必要になります。制吐剤を投与することで症状がラクになることもあるので、くれぐれもつらさをがまんしすぎないようにして下さい。


■まとめ
食べることは、日々の大きな楽しみのひとつですが、吐き気や嘔吐の症状で思うように食べられないのは大変つらいことですね。今回ご紹介したように、食事の摂り方や食べ物の選び方を工夫することで、症状が和らぎ、食べやすくなる場合がありますのでぜひ参考にして下さい。
また、吐き気や嘔吐の症状は、治療や薬の影響に加えて、不安や恐怖心など心理的な影響による場合もあるようです。食べることがプレッシャーにならないよう、調子がいいときに食べたいものをリラックスして食べるようにしましょう。






【参考書籍】
女子栄養大学出版部発行 山口建監修・著『抗がん剤・放射線治療と食事のくふう 改訂版』

クラウドファンディング SPECIAL THANKS
ページトップへ戻るボタン