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【プレミアム記事】放射線療法による副作用の対策と食事のポイント 後編

2020.09.04

前回に引き続き、今回も放射線療法に伴う副作用について詳しく解説していきます。

▶【プレミアム限定】放射線療法による副作用の対策と食事のポイント前編はこちら 


■対策と食事のポイント
1.口内乾燥・口内炎 前編をご覧ください。

2.味覚・嗅覚障害  
前編をご覧ください。

3.
嚥下障害(飲み込みにくい、むせやすい)
【症状】
舌を切除した場合や胸部に放射線照射を行っている場合には、飲み込みが困難、飲み込む時に痛くてつらい、などの症状が起きることがあります。食道の炎症は、照射の回数が増えてくるとともに起きやすくなるようです。個人差はありますが、放射線治療終了から約24週間ほどで治ってくる場合が多いといわれています。
下咽頭への照射では、浮腫(むくみ)や咽頭収縮筋が硬くなることにより嚥下障害をきたすことが知られています。
摂食・嚥下障害の場合、1日に食べられる総量が不足してしまい、体重減少や栄養状態の低下、体力低下などを起こしやすいので注意しましょう。

【対策】
嚥下が難しくなったからといって、食べることをあきらめる必要はありません。
調理方法を工夫したり食材を上手に選んだり、舌やのどの機能をトレーニングすることで、飲み込みやすくする効果が期待できます。また、嚥下障害の場合にも口腔ケアで口の中を清潔に保つことが大切です。

【食事のポイント】
下記のコラムで詳しく解説しておりますので、ご覧ください。
コラム:誤嚥を防ぐための工夫とは 

☆ワンポイントメモ☆
「ユニバーサルデザインフード(UDF)」ご存知ですか

日本介護食品協議会では「ユニバーサルデザインフード」と言って、摂食・嚥下障害のある方でも食べやすいように、レトルト食品や冷凍食品などの調理加工食品や、飲み物や食事にとろみをつける「とろみ調整食品」などの普及を図っています。

容易にかめる 歯ぐきでつぶせる 舌でつぶせる かまなくてよい

4区分に分類されており、その人の状態に合わせたものを選ぶことができます。中でも、「舌でつぶせる」に含まれるソフト食は、利便性が高く注目されています。
ソフト食とは、ハンバーグや肉じゃが、煮魚といった通常のメニューを、ミキサーにかけてペースト状にし、再び元の料理の形に形成した食べ物です。食べやすさと見た目の良さを両立しています。
かまなくてよい」の食品はペースト状になっており、自宅でミキサーにかけて調理するのが困難な場合や、体調が悪いときのストック用に常備しておくことができ、外出時にも簡単に持ち運んで食べられるので、とても便利です。


4.食欲不振
【症状・対策】
食欲不振の原因としては次の二つが考えられます。
・身体的要因(放射線治療の副作用、がん悪液質など)
・心理・社会的要因(ストレスや不安、恐怖などの不安定な心理状態、不快な環境やにおいなど)
原因がわかればそれを改善する工夫をしてみましょう。また、気分の良いときにいつでも食べられるように、食べられそうなものを用意しておくのも良いでしょう。少量で栄養価の高い栄養補助食品を利用するのもおすすめです。

【食事のポイント】
①消化がよく、栄養価の高い食品を選びましょう。
②食欲がないときには、盛り付けの量が多いと見ただけで負担に感じてしまい、ますます食べられなくなることがあります。少しずつ盛り付けて、品数を増やしてみましょう。

▼おすすめレシピ「食欲がない」
https://kama-aid.com/category/59


5.
吐き気・嘔吐
【症状・対策】
胃などの消化管が照射範囲に含まれていると、消化機能が低下して吐き気や嘔吐を引き起こす場合があります。嘔吐を繰り返す場合には、脱水にも注意が必要です。

【食事のポイント】
①一度に沢山食べると吐き気につながるので、無理せず食べられる量を少しずつ、ゆっくりよく噛んで食べましょう。
②吐き気が強い場合には、いろいろな食材が混ざり合うことでさらに気持ち悪くなってしまう場合があります。食材は12種類とシンプルなものにして、食べられるようであれば他の食材をプラスしたり、何かもう1品食べるようにしてみましょう。
③焼き魚や煮魚のように火を通すよりも、刺身の方がにおいが気にならず食べられる場合があります。新鮮なものを選びましょう。
④ねぎやニラ、にんにくなどの香味野菜や、魚・赤身肉などの特徴的なにおいの強い食品、香辛料、油っぽいものは、吐き気を引き起こす要因になる場合があります。
⑤レモンや生姜、梅、ゆず、かぼすなどを使ってみるとさっぱりと食べやすくなります。
⑥味付けは、醤油や味噌ではなく、塩味をベースにしたシンプルな方が、においが気にならずに食べやすい場合もあります。冷たく、口当たりの良いものや飲み込みやすい形態のものを食べてみましょう。
⑦部屋の換気を行い、空気を入れ替えてみるのもおすすめです。

▼おすすめレシピ「吐き気がする」
https://kama-aid.com/category/61


6.下痢
【症状・対策】
腸粘膜への刺激を抑えた消化の良い食材や調理法を選び、1度に食べられないときは数回に分けて少しずつ食べるようにしましょう。また、下痢により多量の水分を失うため、こまめに水分補給することが大切です。

【食事のポイント】
①脂肪分の多い食べ物や、極端に香辛料を多く使った料理、食物繊維の多い食べ物や消化しにくい食材(ごぼう、レンコン、こんにゃく、きのこ類など)、炭酸飲料やアルコールなどの刺激物は避けましょう。
②十分な水分補給を心がけ、冷たすぎる飲み物よりも常温か人肌程度に温めた飲み物を摂るようにしましょう。
③スポーツドリンク類や栄養補助食品は、手軽に電解質補給ができるため、上手に利用するとよいでしょう。

▼おすすめレシピ「下痢」
https://kama-aid.com/category/69


■さいごに

今回は、放射線療法に伴う副作用の対策と食事のポイントについて、前後編2回にわけてご紹介しました。このコラムが、放射線治療中の患者さんの栄養状態維持のために、少しでもお役に立てたら幸いです。

放射線治療の影響により「何を食べたらよいかわからない」「味覚が変わった」「栄養補助食品はどれを選べば良いのだろうか?」「食べるのがつらい」など、食事にお困りのことがありましたら、ぜひかかりつけの病院の医師や管理栄養士などに相談していただけたらと思います。






【参考文献】
・がん病態栄養専門管理栄養士のためのがん栄養療法ガイドブック(2015年 メディカルレビュー社)
・がん患者の輸液・栄養療法(2014年 南山堂)
・がん患者さんと家族のための抗がん剤・放射線治療と食事のくふう(2018年 女子栄養大学出版部)
・がん治療中の食事サポートブック2018(公益財団法人がん研究振興財団)
・国立がん研究センターHP
 がん情報サービス
 小児がん情報サービス
・日本介護食品協議会HP

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