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【プレミアム記事】放射線療法による副作用の対策と食事のポイント 前編

2020.08.28

放射線治療をされている患者さんの多くが経験する、食事に関する悩み。今回は、放射線療法に伴う副作用について詳しく見ていきましょう。

放射線治療は、がんに放射線を照射することで、がん細胞の増殖を抑える治療法です。照射することによってがん細胞が修復不可能なほどに損なわれ傷つけば、がんの縮小や消失につながり治療の効果としてあらわれます。一方で、治療の副作用(有害事象)として、吐き気や味覚異常、食欲不振、口内炎、嚥下障害、下痢などの症状があらわれることがあります。

これらの副作用は、照射する臓器や部位、照射線量などにより個人差が大きいですが、基本的には放射線を照射している部分に起こるといわれています。副作用によって栄養状態が低下してしまうと、QOL(クオリティ・オブ・ライフ 生活の質)の低下にもつながり、がん治療そのものの継続が困難になる場合があります。適切な対応を行うことで重症化を防げることもあり、まずは、副作用による症状を薬で予防したり、食事の工夫により緩和したりすることが、栄養状態の改善へとつながるでしょう。

■まずは、おいしく食べることが大切

放射線治療に伴い、十分な栄養補給が困難になる場合があるかもしれません。そのようなときには、少しでも「食べられること」が先決です。体調が戻って食欲が出てきた場合には、食事のバランスを考えて食べることも大切ですが、食欲がなく食べられないときには「食べられそうなもの」を「食べたいとき」に「食べられるだけ」おいしく食べることを心がけ、食事がストレスにならないよう楽しく食べられる環境を作りましょう。

■照射部位ごとに起こりうる症状
次の表は、食事に関する悩みをもたらす副作用をまとめたものです。放射線を照射する部位によってあらわれる症状は様々です。

■対策と食事のポイント
1.口内乾燥・口内炎
【症状】
頭頸部腫瘍で放射線治療を行っている患者さんを、最も悩ませる症状の一つです。唾液腺が萎縮し唾液が出にくくなってしまうため、口の中が乾燥して粘膜が傷つきやすくなったり、痛みが起こったりします。
口内炎の最初の特徴としては、粘膜があおじろくなり乾燥してきます。照射が進むにつれ症状は進み、口内や歯肉、喉がヒリヒリして、噛むときや飲み込むときの痛みによって食べられる量が減少し、栄養状態が低下しやすくなります。
口内炎・粘膜炎は照射治療終了後にも続き、23週間後にピークとなり、その後徐々に落ち着いていく場合が多いようです。

【対策】
①うがいや口腔ケアで口の中を清潔にする。
口の中が乾燥していると、味の成分をうまく味蕾(みらい)細胞に運べなくなるため味がわかりにくくなります。また、うがいは口の中の乾燥を防ぎ、口内炎の予防にも効果が期待できます。市販されている口内乾燥予防のための保湿ジェルやスプレーなども利用してみると良いでしょう。
②水分補給をする。
唾液の原料となる水分が不足しないように、こまめに水分補給をしましょう。

【食事のポイント】
①粘膜を傷つけないよう、極端に熱いものや固いもの、酸味や味の濃いもの、激辛味などの刺激物は控えて、よく噛んで食べるようにしましょう。
②乾燥したものやパサパサしたもの、口の中でばらけるものは飲み込みにくい場合があります。マヨネーズやドレッシングで和えるなど適度に油を加えて食品のまとまりをよくしましょう。
③飲み込む際に痛みを感じる場合は、冷たい料理を先に食べたり、液状のものは痛む部分に当たらないようストローで飲むなどの工夫をすると食べやすい場合があります。
④水分が多くて軟らかい消化の良い料理や食材を選びましょう。軟らかくても食べにくい場合は、細かく刻む、すり下ろす、ミキサーにかける、とろみをつけるなど形態を変えてみましょう。

▼おすすめレシピ「口が渇く」
https://kama-aid.com/category/78
▼おすすめレシピ「口内炎が痛い」
https://kama-aid.com/category/65

2.
味覚・嗅覚障害
【症状】
舌や、のどの奥に放射線を照射している場合や、癌そのものによる影響で、食べ物の味を感じなくなったり、甘味や苦味を強く感じることがあります。また、金属のような味や、砂を噛んでいるように感じることもあります。
味覚障害の原因としては、次のものが考えられます。
・味を感じる味蕾細胞(みらいさいぼう)の減少や感受性の低下
・口の中の乾燥や亜鉛の不足
・精神的なストレス
・口の中が不潔な状態になっている場合など
治療開始後23週間くらいであらわれます。治療終了後は数ヶ月ほどかけてゆっくりと回復に向かうケースが多いようです。

【対策】
口内乾燥・口内炎と同じように、口の中を清潔に保つことや水分補給で口の中の乾燥を予防することによって味覚障害を軽くする効果が期待できます。
味覚障害がある場合には、においにも敏感になりやすくなります。周りの方は、においの強いもの(洗剤や香水など)や、においの強い食品(ねぎ、にんにく、にらなど)を控えるようにしましょう。

【食事のポイント】
味を感知する味蕾細胞(みらいさいぼう)は新陳代謝が非常に活発で、栄養素の亜鉛の働きによって新しい細胞と入れ替わっています。食欲がなく亜鉛の摂取量が減ってしまうことで不足しないように、意識して亜鉛の多い食品を取り入れるようにしましょう。
《亜鉛を多く含む食材》
・肉類(牛もも肉、鶏・豚レバーなど)
・魚類(うなぎ、牡蠣など)
・卵黄、チーズ、豆腐、大豆、きな粉、納豆など
通常の食品で十分補給できますが、食事があまり摂れないときには、効率良く亜鉛が補給できる栄養補助食品もありますので、利用してみるのもよいでしょう。
▼おすすめレシピ「何を食べても苦い」 
https://kama-aid.com/category/75
▼おすすめレシピ「味がしない」
https://kama-aid.com/category/74

続きは次回、後編で解説していきます。
お楽しみに!





【参考文献】
・がん病態栄養専門管理栄養士のためのがん栄養療法ガイドブック(2015年 メディカルレビュー社)
・がん患者の輸液・栄養療法(2014年 南山堂)
・がん患者さんと家族のための抗がん剤・放射線治療と食事のくふう(2018年 女子栄養大学出版部)
・がん治療中の食事サポートブック2018号(公益財団法人がん研究振興財団)
・国立がん研究センターHP
 がん情報サービス
 小児がん情報サービス
・日本介護食品協議会HP

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