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がん病態栄養専門管理栄養士に聞く!「食べられない」不安への向き合い方

2020.05.15

がんの治療中、これまで当たり前のように食べていたものが食べられない、この状態がいつまで続くのかわからない、といった悩みを抱えている方は少なくありません。食への興味がある人ほど、食欲や味覚、臭覚などの些細な変化にも敏感です。これまでに経験した美味しい味、食感、におい、喜びを覚えているため、その記憶とのギャップに苦しむこともあるようです。

また、患者さんだけでなく、食事を支えるご家族の方も同じように悩まれている方は多いのではないでしょうか。
「昨日は食べてくれたのに今日は食べてくれない・・・」
「今日は食べてくれたけれど明日も食べてくれるとは限らない・・・」
どうしてだろう、と落ち込んでしまうこともあると思います。しかし、このようなときにも無理をせず「今日は無理だったけれど、次は食べられるといいな」と前向きに考えるようにすることが大切です。

がん患者さんが抱える食事の悩みは、心理的影響、治療的影響、体力の影響3つに分類することができます。今回は、この3つのうちの「心理的影響」に着目し、これまで多くの患者さんやそのご家族から様々な食事の悩みについて相談に応じてきたがん病態栄養専門管理栄養士の視点から、食事に対する負担を軽減するアドバイスをご紹介します。


■「これなら食べられる」を見つける
食べられないときには、ついつい「食べられないもの」を言葉にしてしまいがちです。しかし、そんな時こそ「これなら食べられる」ものを見つけて言葉にして並べてみましょう。

「これなら食べられる」というものがあることは、安心感につながります。例えば、一粒の果物や冷たいシャーベットをひと口だけでもかまいません。ひと口でも食べられたという自信が、次のひと口へとつながるケースも多く見受けられました。

カマエイドでご紹介している甘酒のキューブアイスは、ひと口サイズで食べやすく、食欲がないときにも気軽につまみやすいでしょう。

また、冷凍フルーツ盛り合わせは、吐き気がするときや口が渇くときにも食べやすくおすすめです。

■食べた経験がないものに挑戦する
食べたいものが見つからないときには、これまで食べる経験が無かったものや、食べず嫌いで敬遠していたものに挑戦してみてください。

例えばご高齢の方には、トマトソースのパスタや菓子類などはいかがでしょうか。ご自身の経験と比べる記憶がない場合、ギャップを感じることがなく食べやすいようです。また、ご家族が食べているものをひと口だけもらって食べてみるのも効果的です。

■「食べられないもの」を受け入れる
「食べられるもの」と「食べられないもの」を上手に受け入れ、次に食べられるものを自然と探せるようになってくると、食べることに対する恐怖感も薄まって食欲不振と上手く付き合えるようになる患者さんが多かったように思います。

そのような中でも、体調によってはどうしても食べられないときもあるでしょう。
避けたいのは無理をして食べること。無理をして食べた経験が、食べること自体を嫌なものにしてしまうかもしれません。無理をせず、そのような状況もあるのだと受け入れることも必要です。

味覚や臭覚の違和感で食事がつらい日々も、いずれは回復するケースがほとんどです。回復スピードは、ある日突然ではなくゆっくりとしたものではありますが、患者さんご自身の食への興味が快方へのきっかけになることを願っています。


■共感が心の支えになる
最後に、様々な患者さんやそのご家族から受けた食事の悩みの中で、聞くことが多かったフレーズをいくつかご紹介します。

《患者さん》
「食事を作ってくれて感謝している。でも、どうしても食べられない。」
「さっきまで食べられそうだったのに、目の前にくるとやっぱり無理だった。」
「食べて早く元気になりたい。」

《ご家族》
「せっかく作った食事を、どうして食べてくれないのだろう。」
「好きだったものを色々作ってみるのですが…」
「少しでも食べて元気になってほしいのに…」

管理栄養士には話せることも、ご家族に対しては相手を思いやるがために言葉にできないことも多いようです。そんなとき、これまで私が実際におすすめしてきたのが、文字で伝えることです。小さなメモでもかまいませんし、SNSの利用もよいでしょう。時には気持ちを伝え合うことでお互いの悩みに気づき、「そうそう」「そうだったのか」と共感し合うことが互いの心の支えとなるのではないでしょうか。

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