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  • プロのひと工夫

四国がんセンター 「がん患者さんのためのお助けキッチン」

2019.04.08

2月19日、あいにくの雨にも関わらず、四国がんセンター患者・家族総合支援センター「暖だん」には、10名以上のがん患者さんやご家族が集まっていた。視線の先には、なにやらキッチンで野菜を片手に丁寧に説明をする女性。包丁のかわりにピーラーやキッチンばさみで手際よく野菜をカットしていく。四国がんセンター栄養管理室長の鎌田裕子さんだ。

この日、行われていたのは、がん患者さんのための「暖だんお助けキッチン」。四国がんセンター患者・家族総合支援センター「暖だん」では年間150回ものイベントを開催しているが、とくに患者さんに人気のイベントのひとつが、がん患者さんのための料理教室。四国がんセンター所属の管理栄養士が中心となり、調理の工夫など詳しくレクチャーしている。

今日の献立は「豆腐のもちもち磯辺焼き」に「サラダチキンのゆかり大葉ごま和え」、「ピーラーでサラダ」、「もち麦ご飯」だ。

※レシピは、文末でご紹介しています。

豆腐の水切りは電子レンジ。海苔やネギは、キッチンばさみでカットしていく。調味料を加えた豆腐をもっちりするまで混ぜたのち、海苔を敷いたフライパンでこんがりと焼いていく。

サラダチキンは、スーパーなどで手軽に手に入る商品を活用。調理不要で軟らかく、手で簡単にほぐれる。水菜と大葉はキッチンばさみでカットし、「ゆかり」で仕上げる。

サラダに使用する野菜をカットする場面では、歯が90°動くピーラーを紹介。縦向きでも横向きでも自身が握りやすい方向にセットできる優れもの。あっという間に3品が完成した。

鎌田さんが気を配るのは、がん患者さんの家庭での立ち位置。食事を作るのは誰か、患者さん本人か、ご家族か。患者さんご自身が調理をする場合は、体力面を考慮し、できるだけ負担のない短時間でできる調理方法をおすすめする。また、調理中から発生する料理のにおいが辛いという方には、においや刺激の少ない食材や調味料などを紹介する。手のこわばりなどで包丁を握ることが難しいケースもあるため、ピーラーやキッチンばさみなど安全に使用できる調理器具も積極的に使用する。

このような調理の工夫は、がん患者さん自身が食事を作る場合の負担軽減だけでなく、子どもたちや、料理に不慣れな男性も一緒にチャレンジできると好評だ。

イベントに参加した女性(患者家族)は、78歳の母の食事について、治療が始まると食欲が落ちるため心配だという。「治療の副作用で嘔吐などの症状がある際、どのようなものが食べやすいのか。例えばあっさりとした料理など、その時々の状況に合わせた食事がどのようなものなのか、情報がほしい。」と話す。

抗がん剤や放射線治療などの副作用により、食欲不振や味覚障害、口内炎などの症状が出る場合がある。食事への不安や課題は、がん患者さん自身にとっても辛いものだが、それを支える家族にとっても切実な悩みだ。鎌田さんは、入院中のがん患者さんはもちろん、退院後在宅へ移行するがん患者さんへの栄養相談にも力を入れている。

「退院前の栄養指導では、患者さんだけでなく、ご家族にも同席いただいています。ご家族にとって患者さんの今の状況を理解することが最も大切な作業です。ただ漠然とした伝え方では、なかなかご理解いただけない時もあるので、例えば“〇〇と□□だとどっちが食べやすい?”などの質問を交えながらお話しします。このような問いかけは、自宅へ戻られた際、家族間でのコミュニケーションのひとつになりうるのです。」

また、近年寄せられる悩みについても、「SNSなどを通じて、情報が入りすぎてしまう傾向があります。例えば、治療開始前から、“この治療は〇〇の副作用が出ますと聞きました。その際はどうすればいいですか?”などの質問を受けることが多くあります。まだその症状が出ているわけではないのですが、必要以上の情報が不安をあおってしまっているのです。患者さん自身がそのように思い込んでしまっている場合、副作用をより敏感に感じてしまうこともあります。実際、副作用が出た場合の対処方法についてはいくつもの選択肢があるため、実際の症状を確認してアドバイスしています。」と話す。

四国がんセンターに隣接する患者・家族総合支援センター「暖だん」では、こうしたイベントを通して日々たくさんの方を受け入れている。広いフロアには、落ち着いて書籍を読むことができるコーナーや子ども連れでも安心して利用できるキッズスペースなどがある。また温かみのある色合いのテーブルや椅子が並んだスペースでは、がん患者さんやご家族、ご友人、医療関係者などが気軽に談話できるようになっている。

看護師を務める池辺琴映さんは、目的がなくても「暖だん」へ足を運んでいただきたいと話す。

「「暖だん」は、行けば誰か(何か)に会える場所、安心して過ごしていただける場所として、気軽に利用してほしい。がんという病気に立ち向かう中で、自身の気持ちを整理し、次に歩み出すまでには時間がかかるもの。病気をすることで社会と離れてしまう感覚を持つ場合も少なくない。がんとどう向き合うか、今後の生きる道や幸せだと感じる瞬間を、がん患者さんやご家族と一緒にみつけていきたい。」

四国がんセンター患者・家族総合支援センター「暖だん」は、がん患者さんやご家族の生活支援を目的に、全国に先駆けて設立された施設だ。病院職員はもちろん、ボランティアや地域住民の協力により、がん患者さんやご家族、医療関係者を対象としたさまざまなイベントや相談会が開催されている。病院内にありながら、がん患者さんを「生活者」として捉えた支援体制に、今後も注目が集まる。

また、全国にあるがん診療連携拠点病院にも、がん患者さんやご家族が気軽に相談できる「がん相談支援センター」が整備されている。医療者とのコミュニケーションの悩み、療養生活の過ごし方、家族や社会との関わりなど、がんに関する様々な課題を、がんに詳しい医療ソーシャルワーカーや看護師等が、相談員として対応している。このような多くの支援窓口が、がん患者さんやご家族の味方でありたいと願う気持ちは、今後も変わらない確かなものであろう。病気に向き合う今、たくさんのサポートを気兼ねなく受けられる体制が、すぐそばにあるのかもしれない。

四国がんセンター 患者・家族総合支援センター「暖だん」公式HP

http://www.shikoku-cc.go.jp/support/

四国がんセンター 栄養管理室 料理レシピ一覧

https://shikoku-cc.hosp.go.jp/hospital/class/nutrition/

取材:カマエイドスタッフ

◎2/19開催 暖だんお助けキッチン レシピ紹介

◆豆腐のもちもち磯辺焼き(1人前250kcal 、塩分1.0g)

<材料 2人前>

豆腐 1/2丁(150g)

味のり 1パック(5枚)

長ネギ 40g

ゴマ油 10g(大さじ1弱)

【合わせ調味料】

卵 1個(50g)

薄力粉 18g(大さじ2)

片栗粉 18g(大さじ2)

めんつゆ 15g(大さじ1)

砂糖 3g(小さじ1)

マヨネーズ 8g(小さじ2)

ガーリックパウダー 少々

【付け合わせ】(1人前42kcal 、塩分0.2g)

じゃがいも 100g

青のり 少々

塩 少々

<作り方>

① 豆腐はキッチンペーパーで包み、電子レンジ(500w)で約1分半加熱し、水切りしておく。

② 長ネギはキッチンばさみで小口切りにする。

③ ①の豆腐に【合わせ調味料】を入れる。

④ 泡だて器でよく混ぜて、②を入れる。

⑤ もったりするまでよく混ぜる。

⑥ フライパンにごま油をひき、切ったのりを敷いて、その上に⑤をスプーンでのせる。

⑦ フライ返しで返して、中火で3分ほど焼く。

⑧ 【付け合わせ】のじゃがいもは、皮ごとラップで包んで、電子レンジ(500w)で3分半加熱する。

⑨ 熱いうちに皮をむいて青のりと塩をまぶす。

【ワンポイントアドバイス】

・よく混ぜる(こねる)

・山芋を加えてもっとふわふわに

・お好みでタレをつけて食べてもOK

◆サラダチキンのゆかり大葉ごま和え(1人前40kcal、塩分0.6g)

<材料 2人前>

サラダチキン(プレーン) 60g

水菜 40g

大葉 4枚

ゆかり 小さじ1/2

白ごま 適量

<作り方>

① サラダチキンは適当な大きさにほぐしておく。

② 水菜は3㎝程度の長さにカットする。

③ 大葉は細く切っておく。

④ ①②③を合わせて、ゆかりと白ごまを加えて混ぜ合わせる。

【ワンポイントアドバイス】

・水菜と大葉のカットはキッチンばさみを用いると楽ちん

・ゆかりは、梅入りのものを使用するとさらに風味がアップ

◆ピーラーでサラダ( 1人前33kcal、塩分0.5g)

<材料 2人前>

にんじん 40g

きゅうり 50g

大根 50g

塩 少々

白ごま 適量

【合わせ調味料】

酢 大さじ1

しょうゆ 小さじ1

ごま油 小さじ1

<作り方>

① にんじん、大根は先に皮をむいておく。

② にんじん、きゅうり、大根はピーラーでスライスする。

③ ②を塩水に5分さらす。

④ ③の水気をよく切り【合わせ調味料】をかけ、混ぜ合わせる。

⑤ 盛り付けたら、白ごまをかけて完成。

【ワンポイントアドバイス】

・包丁を使用せずにサラダが完成

・【合わせ調味料】はお好きなドレッシングでさらに簡単に

◆もち麦ご飯(茶碗1杯150g 200kcal、塩分0g)

<材料 茶碗3~4杯分>

精白米 1合(150g)

もち麦 50g(カップ1/3杯)

水 米1合分の水加減+もち麦の重量の2倍(100cc)

<作り方>

① 精白米は通常どおりの水加減で準備する。

② もち麦と、重量の2倍の水を追加する。

③ 軽くかき混ぜてから炊飯する。

【ワンポイントアドバイス】

・もち麦は米と一緒に研ぐと、においが軽減する。

・だし昆布を加えて30分ほど浸水するとさらに美味しく炊ける。

・炊飯は通常の「白米コース」でOK

・炊飯後、保温するとにおいがこもったり褐変したりすることがあるため注意。

・しそ、梅、わかめ、じゃこ、ごまなどで混ぜご飯にすると食べやすくなる。

~ぜひ、ご家庭でもお試しください~

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