- プロのひと工夫
味を感じにくいときのひと工夫
2018.07.10
治療中は、舌にある味を感じる部分(味蕾)や、味の信号を脳に伝える神経が影響を受けることにより、味覚に違和感を受けることがあります。「味がしない」「何を食べても苦い、甘い」「酸味を強く感じる」など、症状もさまざまです。また、その日の体調によっても、変化があるかもしれません。
今回は「味がしない」という悩みにクローズアップし、悩み解消につながる調理のヒントをご紹介します。
POINT① はっきりした味付けで、いつもより濃い目にする
ソース味や照り焼き味のように、はっきりとした味付けを選んでみましょう。ソースやタレを多めにかけたり、煮物や焼き物では味噌や醤油の使用量を増やすことで、少し濃い目に味をつけると良いです。
【肉じゃが】
普段より多めに醤油や砂糖を使用し、しっかりとした味に仕上げましょう。
さらに最後にごま油をひとかけすると、香りが向上し味を感じやすくなります。
美味しさには見た目も大切なので、絹さやなどを利用し色鮮やかに仕上げましょう。
POINT② 「表面味」を利用する
同じ塩分量でも、初めに口にする「表面」に濃く味が付いている場合と、食品の内部まで均一に味が付いている場合とでは、感覚的に表面に濃く味が付いているほうが「味が濃い」と感じます。
味が感じられない際にもこのことを活用することで味覚を改善できる場合があります。
【白飯】
ご飯にはふりかけ、佃煮、梅干しなどをつけてみましょう。これらはご飯に混ぜ込むのではなく、表面に味をつけるようにします。その方が味にメリハリが出て、全体が均一な場合よりも味を濃く感じます。
おかゆの場合も同様に、味の強い食品をトッピングに添えてあげると良いでしょう。
POINT③ 香りの強い食品を使用する
においを感じ取ると、その信号は脳に送られます。脳は、味覚・触覚・温度感覚などいろいろな感覚情報を受け取り「物事を認識する」働きをするため、嗅覚が刺激されることは、料理の味や美味しさの認識につながるのです。
料理には香りの強いニンニクやショウガを効かせたり、シソやネギなどの薬味類を使用してみましょう。洋風の場合にはスパイスやハーブを積極的に使用すると良いです。
【冷奴】
シソやミョウガ、ショウガなどの薬味を活用してみましょう。お醤油以外に、ポン酢のように酸味や風味も感じられるような調味料もぜひ試してみてください。
トマトをみじん切りにして、全体に香りと酸味、旨味を加えるのもおすすめです。
POINT④ 旨味を効かせる
旨味は基本五味の一つです。旨味を効かせることで塩分を増やさずにも味を感じやすくなります。出汁をしっかり取ることや、キノコや貝類など旨味が出る食材の使用をおすすめします。
【煮物や汁物の出汁】
煮物や汁物の調理の際には出汁を取り、旨味をもたせましょう。水出しでしっかり旨味が出る、干しシイタケの戻し汁はお手軽なのでおすすめです。
干しシイタケには旨味成分を生成する酵素、分解する酵素があるため、分解する酵素を働かせないよう低温で水戻ししたほうが旨味成分を多く得ることができます。水戻しは冷蔵庫で行いましょう。
一方、昆布と鰹節の混合出汁も強い旨味を感じられます。昆布のうまみ成分のグルタミン酸と、鰹節のうまみ成分イノシン酸が合わさることで、旨味が増す「相乗効果」があるからです。時間や余裕がある場合には、合わせ出汁を積極的に活用してみてください。
POINT⑤ コクがあり、粘度の大きい料理にする
一般的に甘味や旨味、油(脂)の味が濃く、味わい深いことを「コクがある」と表現します。
ゴマダレやホワイトソース、カレーのような食品をコクがあると感じる人が多いようです。
口の中でより長く味蕾(味を感じる部分)が刺激されることで、味を感じやすくなるといわれています。煮込み料理の汁にとろみをつけたり、ソースをジュレ風にするなど、ひと工夫するとよいでしょう。
【サラダ】
普段さらっとして油の少ない和風ドレッシングの使用が多い方は、ゴマダレのように甘味が強く油が比較的多い、コクのあるドレッシング類を試してみましょう。調味料を別添えにして、一口ごとに味を足しながら食べるのも有効的です。
POINT⑥ 酸味や辛味などでアクセントをつける
酸味や辛味をきかせ、味に変化をもたせたり、アクセントをつけてみましょう。酸味を付けるには、お酢やポン酢のような調味料の他、レモンやカボスのような柑橘類を活用してみましょう。辛味を付けるには、からしやわさび、ダイコンやネギなどがおすすめです。
【焼き魚】
塩焼きは表面にふりかけた塩味が舌にストレートに伝わります。レモンを絞って酸味を効かせるのもよいでしょう。柑橘類は香りも立つため食が進みます。
POINT⑦ 料理の温度を人肌にする
味は体温付近で最も感じやすいと言われています。煮物や汁物のような料理は、出来立てではなく少し冷ましてから召し上がってみてください。
【味噌汁】
出汁を取った旨味たっぷりの汁に、味噌の量を調節して普段より少し濃い目に味付けてみましょう。肉やゴボウ、キノコ類など、旨味が出る具材をたくさん使用すると良いです。
少し冷ましてから召し上がると、より味を感じやすくなります。
■まとめ
味覚に違和感がある際の食事のひと工夫をお伝えしました。料理の味や美味しさを感じられるようになると、笑顔がこぼれ、自然と箸が進むでしょう。お料理によって、またご自身の体調によって、どの工夫が手軽にできるのか、相性がいいのか、さまざま試しながらご自身にあう工夫を見つけてください。