「胃の手術後」の食事について
がん患者さんが抱える悩みの一つに「食事の悩み」があり、「治療的影響」「心理的影響」「体力の影響」が原因と言われています。手術や抗がん剤治療、放射線治療など治療方法によっても食事への影響が異なります。悩みを抱えている方も多いと思われる「胃の手術後」の食事について解説します。
<監修>
大妻女子大学 家政学部教授 がん病態栄養専門管理栄養士 川口美喜子 先生
胃の手術後に起こりうる悩み
- ・胃液の分泌がなくなります。(一部の栄養素の吸収障害)
- ・1回の食事量が少なくなります。
- ・胃食道逆流が起こりやすくなります。
- ・胃からの排泄遅延が起こりやすくなります。
- ・ダンピング症状が起こりやすくなります。
胃の手術後に起こりうる合併症
- ・創傷治癒の遅延(キズが治りにくい)
- ・筋力の低下
- ・摂食嚥下障害(誤嚥性肺炎)
- ・免疫能の障害(感染症合併症)
- ・耐糖能の障害(インスリン抵抗性が大きくなり血糖上昇)
胃の手術後に起こりうる栄養素の吸収障害
- 鉄分
胃酸分泌が低下するため、吸収が低下します。
→鉄欠乏性貧血(半年~1年) - ビタミンB12
胃全摘では、壁細胞から内因子が分泌されないため、吸収されなくなります。
※内服により吸収される事がわかってきています。
→巨赤芽球性貧血(全摘後3年~5年) - カルシウム
胃酸の分泌が少なくなるため吸収障害が起こることもあります。
- ビタミンD
脂肪の吸収障害にビタミンDの吸収も低下します。カルシウム移動が促進され、骨軟化症や骨粗鬆症などが起こることもあります。
ダンピング症状の対策について
- 早期(前期)ダンピング症状
食後30分以内にあらわれ、発汗・嘔吐・腹痛・めまい・顔面紅潮などが挙げられます。
- ・時間をかけてゆっくり食べましょう。
- ・1回の食事量を少なくして回数を多くしましょう。(少量頻回食)
- ・食事中の水分を控えめにしましょう。
- 後期(晩期)ダンピング症状
食後2~3時間経った頃にあらわれ、冷や汗・発汗・脱力感・めまいなどが挙げられます。
- ・1回の食事量を少なくして回数を多くしましょう。(少量頻回食)
食事の基本
- ・時間をかけてゆっくり食べましょう。
- ・1回の食事量を少なくして回数を多くしましょう。(少量頻回食)
- ・食事内容は段階的にしましょう。(繊維質や揚げ物などは少量ずつから)
- ・カルシウム、鉄分、ビタミンが不足しないように心がけましょう。
→ビタミンCには鉄分の吸収を助ける働きもあります。
その他、下痢や便秘に悩む方もいらっしゃるとお聞きします。カマエイドでは、下痢・便秘に対応するレシピや、やわらかく煮込んであるレシピなども掲載しています。無理のない範囲で参考にしていただき、少しでも美味しく楽しく食べる事のサポートができれば幸いです。
<参考情報>
国立がん研究センターがん情報サービス
https://ganjoho.jp/public/support/dietarylife/postoperative.html